いつかまた、月の綺麗な夜に
もっと近づける関係になれてたかもと大きく悔やむくらい、わたしは友坂くんを好きでした。
いいところなんてたくさんあるじゃないかと、自分に自信がないらしい素敵な彼を、わたしはいまだ想う。
「遠くにいても、月を見上げれば、綺麗だと僕が伝えたいのは新井さんだ」
「っ」
「未練がましく行動するのは、迷惑だろうか」
「そんなことっ」
「近くにいて、僕なんかよりいいやつはたくさんいるのは承知している……」
「っ、わたしも、月をきれいだと言い合うのは、友坂くんがいいです」
伝えた瞬間に距離が縮まり、わたしは彼の腕の中にいた。
「もう死んでもいい」
「なんでっ? 死んじゃだめだよっ」
必死になるわたしに、友坂くんは、今度は寂しそうじゃなかったけど、馬鹿だなあと笑った。
――END――