サイドキック
act.12
「――――ん、香弥ちゃん」
「、」
「香弥ちゃん。大丈夫?」
心配そうに此方の顔を覗き込んでくる母にハッとして視線を戻す。
最近こういうことが多くて困る。
いつの間にか思考の海にトリップしていて―――だからと言って解決策を見出せる訳では無い、のだけれど。
「(……駄目駄目、考えるな)」
意識せずとも脳裏を掠めるミルクティー色のヘアーと沢山の煌びやかなピアス。
知らずの内に思い出している、柔なムスクの香り。
それらを振り払うように頭を一度横に振ると、意識を集中するべく母親をきちんと見詰めた。
「ごめん、お母さん。何だっけ」
「んもー、聞いてなかったの?」
「ごめんって」
頬を膨らまして不満げに声を洩らす彼女は、今日も今日とて若々しい。
そんな彼女に苦笑を向けることで応酬していると、眉尻を下げつつも「しょうがないわねぇ」と言った母に再度視線を持ち上げた。
「――――香弥ちゃんはもしかしたら嫌、かもしれないけど」
「……うん」
「今度ね、大きなパーティがあるのよ」
そう言葉を口にした母に目線を合わせれば、彼女は困惑しながら視線を彷徨わせた。