サイドキック
今、私の視界を構成するもの。
脱ぎ捨てられた、煌びやかに装飾されたスパンコール調のパンプス。
指輪やブレスレットで装飾された自らの腕。
裸足で砂を纏った血色の悪い脚。
それと――――、
「見付けた」
黒い髪を揺らして肩で息をする、酷く見慣れた男。
目を見開いてその様子を見詰めた。
言葉にしようとも、簡単には出てこなくて。
驚く私とは対照的に、でも、いつものような余裕なんて微塵も感じられないヒロヤは。
酷く真剣な表情で眉根を寄せて腰を屈めたかと思うと、思い切り安堵の息を吐いて漆黒の髪を掻き上げた。
「―――なんで突然消えんだ、バカ」
ぽつり、掠れた声音で落とされたそんな言葉にぎゅっと胸が締め付けられる。
ずっとその瞳から逃げてきた。
真実を知ってから、どんなカオをして会えば良いかなんて分からなくて。
―――――でも、一度絡んでしまった視線をほどくことがこんなにも難しいなんて