サイドキック






「なあユウキ、知ってたか?」

「あ?なにを」

「お前ってな、なんか悩んでたり悔やんでたりするといっつもココ来んだよ」

「(……、…知らなかった)」



思わず目を点にして視線を横にずらした。

すると、示し合わせたように重なったそれに音もなく息を呑む。







かつて派手だった筈の風貌は今は見る影も無い。

さらりと揺れる柔らかな黒髪。ひとつだけ光るシルバーのピアス。



別人だとは思わない。

けれど、纏う雰囲気は真逆になってしまったような。

そんな気がするほど、あの髪色と沢山のピアスはヒロヤの印象として私の中に根深く残っているらしい。












「―――この、髪。ピアスも」

「っ、」

「自由を奪われたのか、お前も」




無意識だった。

そっと伸ばした指先は直ぐにヒロヤの頭髪に辿り着き、それを梳きながら零した言葉でさえも。









「………、ユウキ」









痺れるように落とされた甘美な囁きが私を呼び戻す。

ハッとして自らの取った行動を確認していくと、みるみるうちに羞恥で赤く染まっていく頬は必然だった。






わ、私はなんってことを……!









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