サイドキック
「あ、ご、ごめっん!」
「……ぷっ。いやいいけど、触りたいなら幾らでも」
「ちげーって!つーか笑うんじゃねぇよクソったれ」
「あでッ!相変わらず容赦ねぇな……」
脚を伸ばして奴の腹部目掛けて繰り出した私。
それにゲホゲホ咽るヒロヤを瞳を細めて見詰めつつ、「次調子乗ったら股間だからな」と。
「(なんでこの仕打ちがキスしたときじゃねぇんだ…?)」
顔を若干青くさせたヒロヤが胸中でそんなことを思っていたとは、知る由も無く。
「――――………、」
「あ?ユウキ、どうした」
いつまでもこんな時間を過ごせたら、どれだけ幸せだったろうか。
私だってヒロヤと居ると楽しい。嬉しい。幸せだと、思う。
―――でも、どうしても明らかにしなければならない問題があることがこんなにも苦しくて。
「ヒロヤ、ずっと騙してた?」
私自身、相当動揺しながら音にした台詞だった。
だから日頃のヒロヤ相手のときと全く異なる口調で言葉を吐き出したことにも気が付かないまま、自分が相当悲しい瞳を晒していることにも自覚が無いまま。
苦しかった。
知ったとき、胸が張り裂けそうだった。
どんなつもりで私に近付いたのか、とか。
再会した本当の目的はこれだったんじゃないか、とか。
―――私に近付くことで、私の心を手に入れることで。"結城"を手中にしようとしたんじゃ無いかって。