サイドキック
明らかに傷付いた表情でカオを歪めたユウキ。
今すぐに濃紺の生地から覗く華奢な腕を引き寄せて、自らの腕に閉じ込めてしまいたかった。
ユウキの片腕がもう一方の腕を力一杯握り締める。
それを俺は、色の無い瞳で見詰めていた。
どくどくと厭な鼓動を刻む心臓が煩わしくて仕方ない。
本能のままに行動出来たなら、こんな感情を抱えることも無くて。
昔だったら、昔の猪突猛進な俺だったら。
間違いなく背景に渦巻くシガラミなんか無視して、ユウキに感情をぶつけていたに違いないと思うけれど。
「―――……二言は無いな」
「ああ。………悪い」
「っ、謝るな!」
その瞬間。
明らかに苦痛の表情を浮かべたユウキは勢いよく顔を上げると、裸足で砂の地面を思い切り蹴り上げる。
「そういうことなら遠慮はしねぇ」
コトの直前に呟いた彼女の言葉は俺の耳に届くことが無かった。