サイドキック
夢の中の俺らは何に囚われることも無く、惜しげない笑みで会話を交わしていた。
夢の中の俺らはこの幸せがずっと続くことを信じて疑わなかった。
夢の中の俺らは、互いの気持ちさえ通じれば永遠に一緒に居られる筈だった。
鳥が鳴く。
夜の帳が下りる。朝日が昇って一日が始まる。
硝子が目の前に在った。
迷った挙句、俺はそれを握り締めて、その手に力を込め過ぎて。
バ ラ バ ラ に な っ た
その硝子は煌びやかな光を反射させながら、勢いよく地面に降下していく。
目を見開いてその隙間を見詰めた。
彼女が、居た気がした。
俺が崩壊させたその粒の中に、一際目を引くカノジョが悲しげな瞳で俺を見ていた。
目まぐるしく移りゆく景色は彼女をそのまま連れ出してしまう。
俺は手を伸ばした。
けれど、届く筈も無かった。
―――――ガラス破片に切り裂かれて血に塗れた俺の手が、視界に映るもの全てを赤く染めていくようで