サイドキック
―――――――――――…
『ギブギブギブ!無理!死ぬ!ギブギブギブッ』
『さっきの言葉訂正するか?』
『する!するっての!きゃーもーユウキさんってば超絶男前―――…グォッホ!ゲホゲホゲホォッ』
わざとらしさ全開でそう口にした男を放す直前にもう一度締め上げた。
解放したのと同時にジットリとした視線を感じた。そんなん知るか。
直ぐに立ち上がり姿勢を戻した私は、倉庫に戻るべく早急に踵を返す。
と、そのとき。
『ユウキ』
鼓膜を叩いたのは今し方ふざけたことばかり抜かしていた声音。
それなのに、その筈なのに。
不思議にも真剣味を孕んだように落とされた言葉に、思い掛けず踏み出した脚をその場に縫い留めた。
『………なんだよ』
振り向くことはしなかった。
背中に突き刺さるように注がれる視線に気付かぬ振りを決め込む。
私が知ることは無かったけれど、アイツはこのとき自らの膝に腕を立てていて。
頬杖をつくような姿勢で口角を上げ、至極愉しげな表情を浮かべていたらしい。