サイドキック
今日のために用意された真新しいブラウスに袖を通した。
そして徐に寝間着のズボンに手を掛けると、するりと脱いでベッドを抜け出す。
大きな部屋の隅に小ぢんまりと置かれた、シンプルな姿見の前に立った私は。
真白なブラウスのボタンをひとつひとつ留めながら、血色悪く晒された自分の脚を見詰めていた。
「(どうしようもないじゃんか)」
今日これから赴く場所には、アノヒトも居るだろうけれど仕方がない。
と言うか、今日のソレがアノヒトの思惑通りだっていうことに腹が立ってしょうが無い。
「(でも、)」
これは過去の私が精一杯に考えて導いた答えだから。
それを現在の私が、蔑ろにする訳にはいかないんだ。
丁度シャツワンピのような状態で鏡に映り込む自らの姿。
扇状に広がるブラウンの髪は、寝癖の所為で所々あらぬ方向をむいていて。
それを慣れた手付きで梳いていく。
鏡を見詰める私の瞳には、もう、迷いなんて存在しなかった。