サイドキック
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「到着致しました」
カツン、と。
高めのヒールに包まれた脚を車の外へと投げ出した。
いま私が身に付けているのは、大仰では無いけれど高価なジュエリーピアスにネックレス、加えてブランド物のサングラス。
トップコートだけ塗ったネイルで摘むようにサングラスのふちを持ち上げた。
日頃とは違った色の中に投影される景色。
その光景が余りに予想に沿ったもので、思わず皮肉めいた笑みを口許に浮かべてしまった。
「結城さん!本日ご婚約される件について一言お願いします」
「お相手は近年注目の企業御子息のようですが、これまでにお会いしたことは?」
「買収の噂も出ているのですが事実なのでしょうか」
いつも家のガレージに停められている高級車が私を運んだのは、都内でも指折りに有名なホテルで。
母と私が車から姿を現した瞬間に界隈を包んだ沢山のフラッシュ。
怒涛の如く押し寄せるジャーナリストの人々が口にする台詞で、辺りは擦った揉んだの騒ぎに陥った。