サイドキック
「ああ。………用件は?」
"相ッ変わらずつまんねー野郎だなテメェは。用事ナシに電話したら悪ぃのかよ"
「は?いや…、そういう訳じゃねぇけど」
言葉を口にしながらも周囲への警戒は怠らない。
こんな、明らかに女の恰好をした人間が地を這うほどの低音で会話をしているなんて異端だから。
"ま、用事あっての電話だけどな。番号変わってなくて良かったわ"
「………早く言えよ」
"お前はいつからそうセッカチになったんだよ"
「うるせぇよ」
思わずムッと顔を顰めながらそう口にすれば、何が面白いのか「マジ、お前、ユウキだ」なんて笑い声を上げながら零す男。
呆れ返った声音で再び先を促せば、漸く本題に入ると思った最中で。
"残念だけどコレ、電話で言える内容じゃねぇんだわ"
「は?」
"だからさユウキ、"
"近いうち二人で会おうぜ"
―――…この何気ない会話が引き金となり、私――否、俺とヒロヤの運命の歯車が動き出してしまうことになるなんて。