サイドキック
その目的を逸早く達成させたのが、今回私が嫁ぐ相手ということになる。
想像を絶するほどの嫉妬や羨望。
当事者である子供たちの心理になんて一抹の興味関心も無いのか、大人たちはそんな醜い感情の処理に追われているようだ。
「(―――言ってみれば、)」
私の婚約相手だって被害者だ。
親の考えに縛られ、一度しかない人生で自分の選択をさせてもらえず。
『――……結城社長の素晴らしい御挨拶に心から敬服の意を表します!皆様、皆様。盛大なる拍手を有難うございます!』
まるで宗教みたいじゃないか。
アノヒトが口にする言葉であれば全て"正しい"ものになる。
会場内を包む割れんばかりの拍手を耳にしながら、舞台裏に居る私は思わず嘲笑的な笑みを浮かべていた。
ほんっとに馬鹿みたい。
丁度いい機会なんじゃない?
こんな人間のクズみたいな場所から少しでも離れられるなら、却って清々するってもんだろう。