サイドキック
当初は私もその結論に至った筈だった。
しかしながら、時間が経っていく内に。焦燥に迫り立てられるように考えがぐにゃりと曲がってしまっていて。
「―――稜さん、」
「はい?」
「どうしたら、貴女のようになれますか」
ずっと昴さんの彼女だった筈の彼女。
だが彼女が初めて倉庫に顔を出したとき、私と知り合ってから少なくとも二年は経っていた。
それは即ち、それまで昴さんのこと―――族のことに関与していなかったことを示唆していて。
「私………ですか?」
あの夜、私が昴さんに拾われたあの日から。
稜さんはずっとどんな感情を抱えて、昴さんの背中を見詰めていたのだろうか。
と、そのとき。
「ぷっ、」
思わず目を疑った。
目の前で可愛らしくロングの髪を揺らして破顔するのは、間違いなく今し方言葉を交わしていた稜さんに他ならない。
面白おかしく吹き出してしまった彼女の姿が余りに意外なもので、私はただ目を丸くするばかりで。
「あはは、ちょ、待、あはは」
「稜さん……!いくらなんでも笑い過ぎじゃ、」
「ごめ、なさ、ちょっと待って」
嗚呼、なんだか思い出す。
"………"
"あっはっはっはー、ははははは"
"す、ばるさん…!"
数年前の記憶。
恋人というのは、少なからず似てしまうものなのだろうか。