サイドキック
そうかよ、そういうことかよ。
あんたにとって私は邪魔者でしかないもんな?
――――ならお望み通り、
『出てってやるよ』
固く皮膚に食い込んでいた金属のそれを解放した。
その瞬間カギは甲高い音を立てて地面に落下していく。
『香弥ちゃん……!?』
異変を感じ取った母が扉を開けたときには、もう、私の姿はなかった。
――――――――――――…
『戻った』
『……は、!?ユウキ!?』
『俺だったら悪いかよ』
『ちょ、待て待て待て』
心境をそのまま表すように足音も荒く倉庫に戻ってきた私は。
慌てたように背を追ってくるヒロヤに視線すらも返さないまま、割り当てられた最奥の部屋へと歩を進めていく。
『おかしいだろ、お前いっつも水曜は帰って―――』
その台詞が紡がれる前に大仰なほど音を立てて扉を閉めた。
八つ当たりだと知っている。
でも、このときの私は間違いなく怒りに呑まれていた。
勢いもそのままに乱雑に置かれたソレに袖を通すと、閉じたばかりの扉を再度開けて、そして。
突如として開いた扉に呆然としているヒロヤを鋭い瞳で見下ろすと、引き結んでいた唇を薄く開く。