サイドキック
『ヒロヤ』
『……あ?』
『"黒龍"っつったか、ウチの真似事してる族』
『あ、ああ。たまに"俺らは聖龍だ"って暴走したり乱闘起こしたりしてるらしいが、』
『潰すか』
『あ?』
『―――これから向かう。準備しろ』
『は?ち、ちょっと待てよユウキ!』
『布告もナシに乗り込むなんてお前らしくな――』
―――バタン!
又もや力強く扉を閉めた私は、核心をついたヒロヤの言葉を聞くことを拒否していた。
いま考えるととんだガキだ。救いようも無い。
その通りだったから。
水曜に戻ってくる筈もない私が倉庫に居たり、いつもなら敵に日時を伝えてから堂々と拳を握る筈が寝首を掻くようなマネに走ると言い出したり。
どこが?と問われれば"全部"だろう。
このときの私は本当にオカシかった。
それこそガキのように自らの気を紛らせることにしか考えが及ばず、そんな茶番に仲間を巻き込もうとして。
――――曲がりなりにも"総長"を任された人間の取るべき行動では、無かった筈なのに。