サイドキック
どよん、と。気まずい空気が私たち二人を包む中、取り敢えずと頼んでおいたコーヒーが運ばれてきてカップに手を添える。
場所は落ち合う予定だったファミレス。
さっきナンパしてきたお兄さんはいつの間にか姿を消しており、一気に相手の目を見られなくなった私たちは何方ともなく店の扉を潜った。
「………」
「………」
「……、……ユウキ」
「……なんだよ」
漸く開いたかと思えば、再び口を閉ざしてしまったヒロヤ。
思わず眉根を寄せてその様子を探っていれば、徐に顔を上げた奴は私と視線を合わせてから。
「お前、女装が趣味だっ――」
「それ以上言ったらテメェの脳天カチ割るからな」
間髪を容れずにそう口にした私は、「ちげぇよ馬鹿」と呟いてソーサーからカップを浮かせた。
そのままじっとりとした視線をヒロヤに向けながらもコーヒーを喉に流し込む。