サイドキック
爪を食い込ませていた拳を開いていく。
ヒロヤに肩を引っ張られるように立ち上がると、今し方殴り掛かっていた相手の様子も確認せずに歩みを進める。
その傍らで視線を、おもむろに持ち上げた私は。
『――――ん?なんだよ、ユウキ』
『いや……、迷惑掛けた』
『自覚あるならもうやめてくれよ。心臓に悪いからな』
『ああ』
『ま、テメェが殺人おかさなくて良かったよ』
『………』
肝を冷やした、と。眉尻下げて肩をまわしたヒロヤは私の肩を飛び越えてその後ろまで視線を伸ばす。
既に前方へと目線を違えていた私は気付かなかった。
『絶対……、ゆる、さねぇ』
目を見開いたヒロヤが足を止めて見つめる先に居た"黒龍"のトップだった男の、怨恨に塗れたその一言に。