サイドキック
「ユウキさん」
「はい?」
少しだけ目を伏せていたとき。柔に耳朶を撫でた声音に視線を持ち上げると、ふわりと笑みを浮かべた彼女は言葉をおとしていく。
「私これから買い物に行こうと思ってて。一緒に行きませんか?」
「………、」
「気分転換ですよ」
瞳を細めた彼女はやはり、他の若い女の子とは違うと思った。
一緒にいると心が和いでいく感覚を味わえる。それは大学でできた友人にも感じたことのない感情、だったから。
「行かせて、ください」
「そうこなくっちゃ」
もし、もしも私が本当に男だったのなら。
きっと稜さんに惚れていただろうなと切に思う。そんなことになったら、昴さんに殺されそうだけれど。
思わずクスリと笑みを浮かべていれば、稜さんが不思議そうな表情で小首を傾げていて。私は慌てて首を振ったのだった。