サイドキック
―――――――――――…
「こうやって外でユウキさんと歩いてると、昔のことを思い出すんです」
「……昔?」
「倉庫で組み手したあと、よくコンビニまで三人で行きましたよね。ヒロヤさんも一緒に」
「あ…、懐かしい」
「今でも鮮明に覚えてますよ、私」
目の前でロングの黒髪を揺らす稜さんは、ニットのトップスがよく似合っていて。
薄いピンクの色合いは彼女そのものを表しているようにも思えた。
「すごく嬉しかったんです。他の人たちがぎくしゃくする中でお二人だけは、違いました」
「………」
「きっと皆さん、昴くんが恐かったんでしょうね。今ではもう笑って話せますけど、初めてあの場所に入ったときは緊張感で死ぬんじゃないかって」
思ったりもしたんですよ、と。
それこそ今の彼女の雰囲気からは信じられないくらい、どうってことないと言うような口振りでそう話した稜さん。
もう目と鼻の先まで迫った大型のショッピングモールを背景に彼女と話をするのは、私も何だかおかしいような気がしてしまって。
"念のため"と彼女が貸してくれたショートのボブを耳にかけながら笑みを零す。