サイドキック
「ユウキさ―――」
眉尻を下げた稜さんが私の名を音にした、そのときだった。
――――カチッ
聞き覚えのあるこの、機械的な動作音。
それが耳朶を叩くや否や、今し方煌びやかな光に包まれていたデパートの照明がおちた。
時刻は午後2時すぎ。
太陽がまだ上にある時間ではあるけれど、こういった建物の中は電気が無いと暗がりと化す。
「や、なに…!?」
「ブレーカー…って違うよな、何だよこれ!」
「こんなことってあるの!?」
「ママぁ~っ」
「大丈夫よ、大丈夫だから」
不安に呑まれるお客さんたちの声が耳に入る。
辺りが薄暗くなると同時に眉根を寄せて周囲へと視線を走らせるものの。
周囲では驚き戸惑う人が数多く存在するだけで、この騒ぎを引き起こしたと見られる怪しげな人物は見当たらない。
「―――おかしいですね……」
「、稜さん」
「自然災害とか何かで電力の供給がストップしたなら分かりますけど、こんな平凡な日にデパートが停電なんて」
私も、同じことを思っていたから。
華奢で可愛らしい風貌の彼女だが、ヒロヤや私は勿論のこと昴さんさえも一目置くほど武道を心得ていたりする。
警戒を緩めないようにしながらも隣に控える彼女に視線をおとせば、稜さんも同じように身構えていることが窺えた。