サイドキック
喉がカラカラに渇いていく。
一度落としてしまった視線は目の前の男に戻すことが出来ない。
ミスを犯したのは私。それは痛いくらいに感じている。
時間が無かったことなんか理由にならない。
待ち合わせていた相手はヒロヤだ。
バイト先の人たちでも、大学で出来た友人でも無い。
「―――……、…悪い」
相手の顔もまともに見ないまま、テーブルに額がくっ付くくらい頭を下げた私は。
やっとのことで出てきた声がオンナのものと気付かないまま、口調だけは昔のままに謝罪を口にした。
許してくれないかもしれない。
それは、分かっている。
もしも私がヒロヤの立場だったら、正直どんな顔をしたら良いのか分からない。
だって、遣り切れないじゃないか。
―――――ずっと信じて背中を預けてきた"親友"が、一番近くに居た筈の自分に性別を偽っていたなんて。