サイドキック
決して広くはない駐車場のような場所だった。
コンクリートと鉄で覆われたこの場所は些か、見てるだけで辛くなる。
そんな場所がこんなにも赤く赤く、染められたのは。間違いなく今日が初めてだろう。もう、こんな事態はまっぴら御免だ。
『―――、この奥だな』
後ろで重なっていた男どもの処理は後輩に任せ、一際目をひく眼前の場所を見つめた。
明らかな線引き。きっと俺が立っているココが入口で、その奥に奴らの拠点の倉庫があるんだろう。
足を進める。
躊躇うことはしなかった。
誰があいつから手を遠ざけても、それでも。
俺だけはその手を離すなんてこと、したくなかったから。
『――――………、……』
『………――』
微かに耳朶をかすめる、言葉による応酬。それを感じた俺は直ぐに足を留めると、息を押し殺したままに歩を進めていく。
呼吸を、気配を、感じ取られないように。
血のにおいばかりが充満するその場所で、眉根を寄せてその会話を盗もうと必死に耳をそばだてた。
――――しかしながら、ユウキが大きく行動に移したことで俺の中に動揺が広がる。
静かに、音もたてず。まるで一粒の滴が水に落ちたときのように、小さかったそれは俺を一気に呑みこんだ。