サイドキック
男がにやりと口許を歪めながら地を蹴りあげる。瞬間的に瞳を細めた私は腰を折り、低姿勢でやつの出方を窺った。
もともと声が通るくらいしか隔たれていなかった距離。
あっという間にその空間を詰めた男が、懐からなにかを取り出すのを目にした。
「おっと」
その手元目掛けて、持っていたパンプスを間髪容れずに投げつける。
その瞬間に地面に転がったのは、スタンガンと思しき黒い物体で。その横には乱雑にパンプスが転がった。
「―――素手でこいよ」
「あぁ、そういやテメェ等は昔からそうだったな………いいぜぇ、正々堂々」
「―――なんて言うと、思ったか?」
その、瞬間だった。又しても男が懐に忍ばせていた手を浮上させたのだけれど―――その手には、赤く点滅を繰り返す黒いスイッチのようなモノが握られていて。
段々と点滅のスピードを速めていくそれ。ひやり、と。私の体温が一気に下がっていく気がした。
「女だからって俺ぁ……許さねぇんだよ」
最後に点滅したスイッチ。と、その直前に何故か身体をデパートの建物の影から出るように一気に引いたその男。
ばくばくと心臓が厭な鼓動を繰り返す。とにかく焦燥を覚えて必死に足を後退させる。
―――だけれど、私が行動に出るのは数秒単位で遅かったらしく