サイドキック
「(………なに…、)」
閉じきっていた瞼を持ち上げる。段々と視界に映り込んでくる光景。
それは何故か見覚えのあるものとして私の記憶に刻まれていて、目にした瞬間驚きに息を詰めた。
ガタイのいい身体。
黒いスーツに包まれたその全身。
さながらアクション映画のSPのようなその、風貌。
距離はある。辛うじて視界に留まる程度だ。
まるでコピーされたかのように多数連なるその男たちは、ホテルで催された披露宴でヒロヤと私を追い続けた奴らに他ならない。
いや、同じ人間かどうかは分からないけれど。それでも、まるで示し合わせたかのように合致したその身なりに、あいつらを連想するなというほうが無理な話だった。
「………」
階段の影に隠れるように、息を詰めて脚を後退させていく。
あの会場で追ってきていた奴らは驚くほどの鈍足だったけれど、こいつらに関してはまるで判らない。皆目見当もつかない。
願わくば、見つかりませんように。
段々と感覚すら薄れてきている脚を支えるように腕で壁に身を寄せ、固唾を呑んで階段を下っていく。