サイドキック
やっとの思いで階段から解放され、どこかのフロアの踊り場に到達した。
尻目で流すように視線を後方へと滑らせると、やはり男たちとの距離は縮まっていて。
既に階段を下り始めているそいつらを目にするや否や、チッと隠すことなく舌打ちをかました。
「(……どこか…隠れる場所、)」
今の私では、逃走を続けたところで追い付かれるのは時間の問題だ。
決死の思いで視線を周囲に走らせる。
そこで、ちょうど階段から死角になり得る入り組んだ通路を見付けた。
一か八か。賭けてみるしかないだろう。
奴らが階段を下りている間は私のことは見えない筈だ。さっき、下っているときにフロア内を窺うことは出来なかったから。
そうと決まれば行動に移すのみ。眉根を寄せて脚を引きずり、その場所を目指して突き進む。
辿り着いたその場所。
ピタリと壁の際まで身を寄せた私は、上がる息を整えるように深呼吸をひとつ落とすと。今度こそ見つかってしまわないように、呼吸を殺して連中の動向を探った。
壁の向こうから伝わってくる気配に、焦りが冷や汗となってこめかみを伝う。
足音から判断するに連中はこのフロアでは足を止めず、どうやら下の階にまで足を伸ばしたようで安堵の息を吐く。
――――しかしながら、それは私の早合点だったらしく