サイドキック
こいっつ……!
こんな場面にも関わらず飄々といつもの態度で言葉を重ねていくヒロヤを、思わず死んだ魚のような眼で見つめる私。なにこいつ、本当。
しかしながら、ヒロヤの口振りから察するに今し方奴もどこかに閉じ込められていたのだろうか。
……だとしたら。気を失う直前に感じた、くく、唇のあれってもしかして……!
「(やばい、思い出したらまたカオが熱くなっ――)」
「ユウキなにしてんの、タコみてぇになってっけど」
「………何でもねぇ」
「そうか?」
首を捻って疑問を洩らしたヒロヤにバレることだけは、避けなければ。また好いように扱われるに違いない!
上昇を続けていた体温を強制的に引っ込め、表情を引き締めたまま頷いてみせる。
そんな私を見たヒロヤは、些か納得していない様子ではあるもののニセモノ男へと視線の方向を違えた。
そして、
「―――で、テメェは何なんだ」
「お前……。よく散々ふざけてからそんな台詞吐けるな」
「ま、それが俺のアイデンティティだからな。んで?俺らに何の用だ、どっか潰した族の残党か何かか?」
「………」