サイドキック
「じゃ、質問変えるわ」
なにか分かるかもしれない。
兄貴が死んだ原因は、交通事故だった。しかしながら俺はその現場を見た訳じゃない。
人づてに―――端的に言えば親父から、事故の一部始終を聞いただけだ。
そしてその後、既に体温の消えた兄貴と対面した。
「アンタはサトルと今でも連絡を取っているのか?」
そして轢き逃げしたその犯人は今も、見つかっていない。
兄貴を轢いたのは軽自動車でもトラックでもなく、大型二輪―――つまりはバイクだったらしい。
男の唇が微かに震えだすのを、俺は見逃しはしなかった。
それが、あの事件を知っていることの裏付けを示しているような気がして。
こいつは誰だ。兄貴と、どういう関係だったんだ。
「――――サトルが死んだときアンタ、どこにいたんだ」
「………ッ」
胸中に渦巻く感情は一体なんなのか。
悲しさ、悔しさ、苦しみ、後悔。名のあるマイナスの感情を全部混ぜ込んだような激情が、だんだんと俺自身を呑みこみ始めて。
「アンタなんじゃないのか、…………サトルを、兄貴を殺したのは」
もう、止められそうになかったんだ。