サイドキック
どんなことを言われるか想像も付かない―――まさか、そんなことは言えない。
わかりきったことだ。断られるに決まっている。
それに第一、彼女自身の許可を貰った訳でもなんでもない。ユウキの気持ちを丸っきり無視してこんな行動を取っている俺は馬鹿で滑稽かもしれない。
――――でも、
"悪い"
"……っ、!"
"その問いには、答えられない"
あのとき見せた彼女の傷付いた表情は、絶対に嘘なんかじゃない筈だから。
少しでも俺のことを気にしてくれているなら、あとは頑張りゃ何とかなるような気がして。
取り敢えず俺自身が気持ちさえも伝えられないこの状況だけは、打破したくて仕方がなかった。
だから、
『親父?俺だけど、ちょっといいか』
『ああ、宏也か。入れ』
海で彼女の問いをナイガシロにしたあの日を経て、親父に告げたことは俺の決意そのものだったから。
ひたすら視界に映るカーペットを見つめたまま、段々と脳裏に浮上してくるのはあの日二人で話したこと。
兄貴が居なくなって全てが俺へと注がれる中で、親不孝なのは痛いほど実感した。
それでもユウキへの気持ちは抗いようもないほど膨れきってしまっていて。