サイドキック





* * *



眼前で背を向ける親父を音もなく見つめた。

俺の言いたいことは既に告げた。あとは返答を待つのみ。


そんな中ひたすらその視線をPCへと向ける親父の表情は、背を向けられている所為で全くわからない。

せめてその画面が暗転していれさえすりゃ、照明が反射してわかるのに―――そんな見当違いなことを考えてしまうほど。







『――――なにか言ってくれよ、親父』




ただ無反応を貫き通す親父の考えていることが、全然わからなくて。

いや、わかるか。怒っているのは確実だ。

今まで非行を繰り返してきた俺を諦めずに見守ってくれたのは、親父とお袋の優しさだったから。

それら全てをひっくり返そうとしているのかもしれない、俺は。










『そうだな』



そう言葉をおとし、前触れ無くくるりとチェアを反転させた親父は驚くほど。

その表情を違えていなかったから、目を見張った。

怒ってもいなければ悲しんでもいない、笑ってもいなければ喜んでもいない。




端的に言えば「喜怒哀楽」が抜けきった面持ち。それを経由したあとなのか前なのかは分からないが、浮上させた視線はなにかを思案しているようにも思えた。







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