サイドキック
『バカみてぇなことだって思うかもしんねぇけど、』
『―――いや?そうは思わないさ』
『でも、って……―――は?』
『宏也。お前は』
そこでガッチリと合わさった視線に嫌でも吸い込まれる。
親父の両手はデスクの上で組まれ固められているから、そんなワケはねぇのに。
まるで両側の頬をガッチリと押さえ込まれているような。そんな、感覚だった。
『本気なんだろ?そのお嬢さんに』
その言葉尻に後続して、『今までと違って』と聞こえてきそうだと感じた。
お袋は知らないかもしれない。けれど、ずっと俺の動向をどこかしら探っていた親父は知っているに違いない。
タガが外れたように女遊びを繰り返す、ユウキと再会する以前の俺を。
『―――――、ああ』
これまでは親父の手の奴らに付けられたところで、特段気にする必要もなかったんだ。
そりゃ最初は上手く撒いたりしてたような気はするが、一度バレちまったらその後はどうでも良くなった。
そんな風にそれまで大っぴらに行動を親父に読ませていた俺が、ユウキに本気になってからは。
『上手い具合に撒いてたもんな。気付いてたのか』
『……気付かねぇワケねーだろ。もっと人選考えとけよ』
『このコだろ?』