サイドキック
『………どこのどいつだ』
『その言い方じゃ"ひとつ"に聞こえるな。俺はまだ"幾つ"かなんて言ってないぞ』
『は?』
『つまり』
それまで写真に注いでいた視線を一気に持ち上げた親父は、その上に立つ男独特の雰囲気をふんだんに撒き散らして笑みをひとつ。
しかしながらソレはある意味俺を叱るようなモノで、開きかけていた口を噤まざるを得なかった。
『――――俺ら以外にも彼女の動向を探っていた連中が、ふたつ居たってことだ』
そんな、まさか。
俺はまだしも、ユウキは付けられていることに気付かないレベルの奴なんかじゃない。
間抜け面で親父を見下ろす俺に気付いた男は、『カッコ悪いぞ』と声を向けるものだから思わず顔を逸らす。
わぁってるっつの。カッコ悪ィことなんか百も承知だって。
『………そいつらの正体はどうせ、教えてくんねぇんだろ』
『当たり前だろう。そんなの、攻略本を買った挙句にネットで攻略法調べてゲームに打ち込むようなものじゃないか』
『(……その例えがさぁ……)』
思わず思いっきり細めた瞳で親父へと視線を投げ掛ける。
しかしまぁ、有難いけどな。そういう奴らの存在とその数を知れただけで、俺としたらやりやすいことこの上ない。