サイドキック
『お前は今、攻略本を買ってゲームに臨む状態だ』
『親父。マジでそういう例えヤメたほうがいいと思うぞ』
『いいから聞けって』
またもや悪戯な笑みで言葉尻を飾った男は、自分の親に言うのもアレだけどぶっちゃけ実際の年端よりは大分若く見える。
そんな男を再度噤んだ口を引き結んで見つめた。
『さっき、言ったよな。彼女と結婚したいって』
『………』
『せめてプロポーズできる環境にしたい。必要なら勘当してくれて構わないって』
『…………ああ』
途中まではむず痒い心地で親父の台詞を耳に入れていた俺だったけれど、"勘当"という言葉がスルリと耳朶を撫ぜるのと同時に急激に体温が低下していくのを感じた。
どう願ったって、どう転んだって。
ユウキの実家とこの家は敵同士のカンケイで、この先それが交わることなんて無いから。
初めは悩んだ。ていうか今も揺れてないと言ったら、ウソになる。
しかしながら交わることのない道のりで彼女と再会して、女だと知った。
そのとき、ポンと。ずっと胸の奥底で燻ぶっていた感情の答えが明示された気がしたんだ。
ずっと抱えていた感情。答えを出してしまったら駄目だと、早々に諦めてしまっていた感情。
もがくように、病的だと言えるくらい女遊びを繰り返してきたのは、ユウキに対する俺の感情を認めてしまわないように。
俺にだってピースの嵌まる女が居るんだって、そう叫びたかったからなのかもしれない。