サイドキック





再度訪れた沈黙は必然のもののような気がした。

親父にとってみたら、これほどの親不孝はないように感じたから。

ずっと大切にしてくれたのはわかる。知ってる。それを今、俺は突っ返そうとしている。




『――――本気なんだな』






これでもう、最後のような気がした。

この話題に関して親父が俺の意志を確かめてくるのは、この場で最後なんだと。

そう、暗に仄めかしているようなニュアンスを、言葉の隅々から感じ取ることができた。




『本気だ』





イエスでもノーでもなく、その言葉を繰り返すことで自分の意思を明示したかった。

だからそうした。俺はこの瞬間、親父がどんな表情でどんな台詞を返してきてもいいように見据えていたつもりだったのだけれど。














『それでこそ、俺の息子だ』






まさかそんな笑顔で肯定の言葉を返されるなんて、想像すらしていなかったから。

思わず口を飛び出した『は?』という自らの声を自覚することもなく、ただ呆然と。


ニコニコと俺を見上げ続ける親父に、視線をおとし続けた。






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