サイドキック
act.5
ただ、何も言わず。
闇雲に向かってくる人間に拳を捻じ込ませ、崩れ落ちる彼らを目に映すこともせずに歩を進めていく。
「―――………、」
この先に何があるのかなんて分からない。
でも、私はこうするしか無かったから。
バチバチと街灯に群がる害虫たちと同じように、夜になっても眠ることの無い街で喧嘩に明け暮れる。
この日も相当な数の男たちを相手にした。
けれど私にとってそいつ等の数なんて何の意味も成さなくて、ただ思うことは一つだけ。
――――あの家に帰らなくて済むなら、喧嘩でも何でも買ってやる。
「アイツだ!!」
「なんだよ、まだガキじゃねぇか」
又もや数人の男によって塞がれた道。
フードが滑り落ちないように今一度強く引っ張り、段々と集まり始める人間を感情の籠らない瞳で静観していた。
「よォ兄ちゃん、昨日はよくも可愛がってくれたな」