サイドキック
譲る気は更々ないらしい。
早々に諦め細く息を吐き出した俺は、一度だけ背後のユウキに視線を送ってから再度親父に向き直る。
後ろで尚も俺を見上げ続ける彼女の瞳が、不安で大きく揺れた気がした。
「―――komiyama、結城興業、そして藤堂」
「………ッ」
「早い話がユウキと俺を除くこの場の連中、全てだ」
「そうだろ?」
分かってた。
背後で大仰とも言えるくらい肩を上下させている彼女のことを。
もう限界を超えてしまっていて、腰すら上げられないままこの場を静観していたユウキの心情を。
音が出るほどに崩れてしまった、彼女自身の父に対する信頼の完膚無きまでの崩壊を。
でも、それはどう抗っても変えようのない事実としてユウキを執拗に追い続ける。
他の誰かが面白おかしくそれを口にするくらいなら、俺が。
――――せめて俺が、ありのままを言葉にしたほうが良いと思ったんだ。
「さすが俺の息子、と言ったところか」
口角を上げてそう口にした親父は、いつもどこかで先々のことまで考えているような男だ。
昔から少しは思ってた。
しかしながら、その仕事ぶりを間近で見ているうちに。
余りの頭のキレ具合に、一抹の気味悪ささえ覚えてしまうくらいだと。そう、感じていたから。