サイドキック
「ああ、藤堂か」
そこでヒロヤが一度、点頭をおとしたことを知る。
そのまま言葉を重ねたヒロヤのお陰で、あいつがあの後どうなったのかを知り得ることができた。
あのとき突入してきた警察によって身柄を取り押さえられたこと。
そして、ヒロヤの兄貴の事故を起こした犯人としてはまた、別件で起訴されるということ。
「………そっか」
「ん」
正直、あのときの私は自分が一番の元凶なんじゃないかと思ってヒロヤに逃げることを示唆した。
しかしながら、結局は私ひとりじゃどうしようもなくて。
ヒロヤの手を借りないと、こうして生き延びることもできなかったと思う。
そしてあの事件を通じて痛いほど実感したのが、
「ヒロヤ」
「あ?」
「もう、いいよ。"俺"に構わなくても」
――――ヒロヤはやっぱりあの、"komiyama"の跡取りなんだって。その一点に尽きる、から。
本当は、あのパーティでこいつの実家のことを知ってからも。
小宮山には他に長男がいた筈だから、もしかするとヒロヤは関係ないのかもしれない、とか。
抱いていた期待は淡すぎるもので、サトルさんのことを知った私のそれは呆気なく消えた。
「今まで、ありが―――」
近くにいればそれだけ、無駄な期待を抱いてしまう。
絶対に叶わないのに。それなのに、期待してしまう。