サイドキック
だから今回だって絶対、録画しようとした父さんが間違えて視聴予約にしてしまったと納得して疑わなかった。
まあ、病院のテレビでそれができるとは思わなかったけれど。
――――と、その瞬間。
『と、言うことは社長!komiyamaは結城興業を吸収し合併、という形でよろしいのでしょうか』
するりと耳朶を撫ぜた声音にビクリと肩が上下する。
完全に動きが止まってしまった私を、父は面白いものでも見るように瞳を細めていた。それはもう、穏やかに。
「………え……?」
ちょっと待って。どういうこと。今、一体なにが起こっているんだ。
『はい、それでオーケーです』
『………』
テレビの中に居る、見覚えのある人物たち。
一週間ぶりに見るその姿は心なしか疲れが滲んでいて、でも、込み上げる愛しさは抗いようもない事実で。
砕けた口調で記者に返答を向ける親父さんを視線で諌めたヒロヤは、ピンと背筋を正していて。
一目で高級なそれと判るスーツに身を包んだ男は、完璧すぎていつものあいつからは想像も付かないくらいだと。
そんなことを思ってしまえるほど、立派だと言わざるを得ないと感じた。
『……komiyamaは結城興業と合併こそしますが、それはあくまで提携上の形だと御理解願えると幸いです。そして僕、小宮山宏也は』
しん、と。会場全体が静けさに呑まれたことを知る。
自らの名を口にしたあと一呼吸挿んだ男は、力強い瞳でカメラの奥を射るように視線を伸ばすと。