サイドキック
思わず眉根を寄せて正体不明の男を眼光鋭く睨み上げた。
闇夜に浮かぶ金髪。
至極愉しいと言わんばかりに緩められた口許。
出逢いは偶然か、はたまた必然か。
「―――ジコショーカイ、しよーか嬢ちゃん」
一瞬不気味だとも取れる笑みでそう語り掛けた男だが、そんなことで此方の警戒が解ける訳もない。
「俺は昴《すばる》ってんだ。今日は単に興味本位での偵察のつもりだったんだけどよ」
そんなことを宣いながらも、私の両手に重きを掛けるその脚には少しの遠慮も感じられない。
「気分が変わった」
こういう作戦なのか?
微動だにせず、絶妙に加減して私がアクションを起こさない様に牽制しているのか否か。
そこらは定かでは無いけれど、今までの――言ってみれば悪役染みた笑みで独特の雰囲気を放っていたその男は。
一変して少しの邪気も無いような笑みをその端正な顔に浮かべたものだから驚く。
「お前、俺と一緒に来い」