サイドキック
/ 友人の場合
* * *
『結城興業社長の娘である結城香弥さんと、今日を以て婚約します』
テレビから流れてくる声音を何気なく耳にしつつ、今までも続けていた会話の続きを口にする。
駄目元で香弥にも連絡を入れておいたけれど、やっぱり来られなかったみたい。
眠気眼を擦りながらもなんとか視線を上げていれば、そんなあたしの耳に信じられない言葉が飛び込んできて。
「はぁ!?ねぇッちょっと!!」
「あだっ」
「これこれ!寝てる場合じゃないって!!見てよテレビ!!」
「これって、大学いたときの香弥じゃない!?」
集まっていたのは同期のゼミで仲の良かった三人。あたしも含めて。
これにプラスして香弥が居れば、もう完璧だったのになぁ―――……って!
「「ちょ、はぁああああ!?」」
上手い具合に顔を隠されてはいるものの、あれは確実に香弥だ。
なに?なんで香弥がテレビに映ってるの?なんかやらかしたの、あの子?
正直飲んだくれてて、なにがなんだか分からない。
慌てて右上にでかでかと記された文字を視線で追えば、「合併!komiyama、結城興業」とゴシック調のそれがこれ見よがしに踊っている。