サイドキック
/ 家出ですか?宏也さん
「――――香弥」
ああ、もう、慣れない。
切なげな声音に滲ませるように零された奴の台詞に眉を顰めた。無論、照れ隠しで。
「………なに」
「ヤってもいい?」
「な、なにを………」
途端、奴は一度大きく見開いた瞳を段々と細めていく。
なんて白々しい。
分かってる。私はこの男が言いたいことくらい理解しているつもりだ。
だってこのやり取りをするのは、
「なにって、セックス――てぇッ!!!」
「(最後まで言わせてしまった…!)」
「何しやがんだテメェ!!」
今日が初めてでは無く、と言うか数えきれないくらい同じ応酬を繰り返していたから。