サイドキック






―――――――――――…



「と、いうワケで俺今日からここに世話んなります」

「ヒロヤてめー、絶対俺のこと先輩だと思ってねーだろ…!つーか端折り過ぎなんだよ、こっちはワケも何も分かっちゃいねーんだけど―――って、あ!こら勝手に入るんじゃねー!」

「お邪魔しまーす」

「え、ええと……?いらっしゃい?」

「稜ちゃん!?」



ぎゃんぎゃん喚く昴さんには悪いとは、思ってるぜ?(本当かよ)

だがしかし俺のハートも今回ばかりは無理だと音を上げた。挫折だ挫折。









だって聞いてもみろよ、



「記念日覚えてねぇわ、手ぇ出そうとすれば攻撃されるわ、終いには"きもい。勃つな"だ?あいつは男ってもんを何にも分かっちゃいねぇ…!」






悲しいことに俺は奴より弱いだろ。

いや力だけで見れば強いんだろうが、何しろ反応が俊敏すぎてどうにもこうにも仕返しを食らう羽目になる。


俺だって力で押さえ付けて、なんてクソみたいなことはしたくねぇし。









「だからと言って、アイツが頷くの待ってたらジジイなるっての!」

「ヒロヤさん?おーい……独り言ですか?」

「ほっとけ稜、そのまま玄関から追い出して鍵閉めるぞ」

「だから俺は決めたんです!!」






闘志を滾らせた瞳もそのままに身体を反転させれば、今まさに腕を上げて俺に向かってこようとする昴さんと目が合った。

その光景に首を捻りながらも再度マンションの玄関に足を踏み入れる。







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