サイドキック





「あー…!入っちまったクッソ!」

「なんすか?ハエですか?」

「お前だよ!!!」



今日も元気な昴さんが羨ましいぜ全く。

既に視線を外している俺に尚も言葉を向けていることは知っていたが、正直心が傷付き過ぎて相手をする余裕もねぇ。

悪いな、昴さん。






「稜さん」

「え?えーと……なんですか?」

「ハジメテってやっぱ、痛かったですか?」

「は?」

「ヒロヤぁああああああ!!!」






そんな声と共に、元気印の昴さんが髪を振り乱しながら俺のことを追い始めた。

なんか不味いこと言ったか?身に覚えがねぇんだけど。

軽く首を傾げながら尚も追ってくる昴さんから逃亡をはかるべく、俺は駆け出したのだった。








「こら!!!足音立てない!!!近所迷惑も考えてください!!!」








普段は可愛い佇まいで相手に好印象を与える稜さんのカミナリによって、その追いかけっこは直ぐに終わりを迎えたけれど。








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