サイドキック
「(いやいや、ちょっと待て私)」
これはもしかするとチャンスかもしれない。
残念ながら青春の大半をオトコとして過ごした私は、今までそういう関係になった男が存在しない。
剰え男装が正装のようになっていたくらいで、ヒロヤと一緒に居れば何度も女の子に声を掛けられたりした。
いや本当の私は女だし、勿論お断りしたけれど。
だからまあ何が言いたいかというと、
「――――三人に、聞きたいことがあるんだけど」
そういう例のアレに関する情報、のようなものを得る好機だと私は見た。
「うんうん。で?」
「で、って……」
「結局はまだエッチしてないってこと?」
「声!デカいって!!」
「そんなことないって。香弥ってばウブすぎ!」
笑顔でバシン!と背中に平手打ちを繰り出した彼女を恨みがましく見つめた。
睨んでない。視線を送っただけ。
しかしながらそんな私の様子なんて微塵も気にしていないらしい彼女は豪快に笑ってみせる。
このとき私は思ったくらいだ。
私が眼光鋭く睨んだところで、この子たち相手だと全く功を奏さないんじゃないかと。