サイドキック
「―――で、条件は?」
ようやくいつもの表情を取り戻した男は、ちゃらけたように小首を傾げると私の顔を覗き込む。
先ほど私から繰り出した口付けの所為でその唇にルージュが乗っていることを目線で捉え、くすりと笑みを洩らした私は答えるように微笑むと。
「殴らせろ」
「は?」
「だから一発、殴らせろ」
「お前だけ痛い思いしないなんて、私だけ割を食うみたいで嫌だから」
家
出
で
す
か
?
宏
也
さ
ん
( この後の結果を知るのはふたりだけ )
―END―