サイドキック
こうやって彼此悩むことが一番いけないんだろう、とは思う。
妊娠中はストレスが大敵だって聞くし。寧ろこうして悩んでいることが既にストレスだと思う。
でも、考えない訳にはいかなくて。
私は別にいい。誰に何を思われようと、それこそ昔から言われ慣れているから。
「お待たせしました。結城香弥さん、どうぞー」
「………はい」
どうしよう。看護師のオバサンが優しさ満開の笑顔を向けてくれているけれど、私が返した笑みが余りにぎこちないもので。
しかしながら、そんな私を見て一層穏やかな表情を浮かべてくれたオバサンを見て少しだけ救われた気がした。
「今日はどうしました?」
目の前でオバサンと同じく柔な微笑みを湛えた御老人……失礼、産婦人科医が口を開く。
先ほどまで暗雲が立ち込めていた私の心境も、そんな柔な空気に溶かされていく。
不安全てを拭い去ることはできないけれど。それでも、幾許かは救われた。
「……あの、生理がきていなくて」
だから意を決して音に乗せた私の言葉を、二人はこれ以上ないくらい真剣な面持ちで聞き入れてくれた。
* * *
尿検査や、棒状の装置を用いた超音波検査などを受けた。
その結果が記されているのだろう、白いカルテと書類を看護師さんが医師の先生に手渡す。
眼前に居る先生が何やら神妙な面持ちで頷いていることが窺えて、思わず私は息を呑んだ。