サイドキック





そしてその皺だらけの口が開いた瞬間、身構えるように全身に力を込めた。

暫し無言で見つめ合う。御年80歳を超えていそうな先生をそのまま身動きせずに見遣っていれば、その目元がふっと優しく緩められた。



そして―――







「御懐妊おめでとうございます」







向けられたその言葉を、私はぼんやりと反芻していた。





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