サイドキック
「つーかユウキさんさぁ」
「な、……何」
「夢にまで俺出てくるとかヤバくね?どんだけ俺のこと好きなんだよ」
「!!」
全くの正論だった。だから驚きに目を見開いた私の頬は(もともと赤くなっていたにも関わらず)更に熱を帯びてしまって、さすがにもう隠せそうになくて。
反論したいのに言葉が詰まって出てこない私を、真正面から見下ろした宏也はと言うと。
「………香弥ちゃん」
「………」
「香弥ちゃん」
「………」
「こっち向けって」
「………」
「耳犯すぞ」
「みッ、!?」
なんか新しい言葉が聞こえたような気がする。
必死に視線を合わすまいと頑なにテレビを見つめていた私の耳朶に、囁くような台詞と空気が送り込まれて肩がとび跳ねた。
引き千切りそうな勢いでクッションを抱き締める私と、そんな私の手にあったエコー写真を大事そうにローテーブルに置いた宏也。
その横顔を目にした途端胸がきゅうっと音を上げて鳴いた。
「………あ。そういえば」
「なに?」
「ユウキの拾ったあの猫引き取ったやつ居るだろ?そいつからこの間連絡きたんだけどさ」
「………、?」
穏やかな笑みを浮かべたままスマホを操作し始めた宏也を見つめ上げ、数秒待機する。
首を傾げる私を知ってか知らずか、「ほらこれ」なんて口にしながら画面をこちらに反転させてきて。
それを見た瞬間、私は文字通り目を丸くした。
「あの猫メスだったんだってな?最近子どもわんさか出来たんで一匹どうですか、ってメールきてよ」
「………」
「このマンションだったらペットOKだし、ユウキが良ければ引き取るけど?」
「た、頼む!」