サイドキック
「稜こいつはな、超強いんだぜ?だから恐がるとか無いから気にすんな」
「関係ありません。女の子ですから」
「んー、どうしてそんなに噛み付くんだ?俺が叩き起こしたからか?」
「関係ありません」
「……稜ちゃんごめん許して」
そろりとマグカップに手を添える傍ら、尚も痴話喧嘩のような会話を繰り返す両者をじっと見つめる。
最終的に目にしたのは金髪男が泣きそうな顔で少女に許しを乞う姿。
「(……、飲んでもいいのだろうか)」
甘い香りを放つカップに視線を落としてみるが、何て言うか。
一抹の遠慮が拭えない中、蚊帳の外に置かれた私はどうしたら良いか分からない。
と、そのとき。
「稜、なんで今日俺がこいつを連れてきたかって話だけど」
「あれ?遠慮なんかしなくて良いですからね。毒とか入ってないですから」
「あ…、ありがとう」
「ふふ!いいえー」
「ねえ稜ちゃん、聞いて」
尚も金髪の言葉を遮って私に言葉と視線を向けてくれた少女。
思わず零れた感謝の言葉に対し、彼女はあどけないながらも息を呑むほど綺麗な笑みを浮かべた。