サイドキック
「で、なんでしたっけ?昴くん」
「うん……。俺はこいつを"聖龍"に引き入れたいんだけど、女じゃ不味いだろ」
「………」
「だから、稜はまあ器用だし髪切って貰おうかと思って」
は、なに?まず聖龍ってなに?
ぽっかーんと間抜け面を晒す私なんか余所にして話を進める金髪は、終いには髪を切るなんて言い出すから驚いた。
確認と言うかなんて言うか、私何にも了承してないけれど。
徐に顔を上げた少女はそんな私の表情を認めると、
「―――昴くん、ひとつ確認ですが」
「んー?」
「それは彼女と相談して決めたことですか?それとも例に洩れず独断ですか?」
眉根を寄せて怪訝さ剥き出しの少女はそう口にした。
そんな彼女を目を丸くして数秒見つめた男は、にやりと口角を上げてこう言葉を返す。
「今はまだ独断だけど。ゼッタイ説得出来る自信あるぜ?少なくとも、そこらの低俗な輩には取られたくない逸材だからよ」
パチン!と指先で鳴らした男は、そのままくるりと向きを違えて私にその指の標準を合わせる。
その表情は出逢って初めて見る大人びたもので。私は、音も無く息を呑みこんだ。