サイドキック
――――――――――――…
結局。
「ヒャッフーイ!」
「……まだ弄りたかったんだけど」
「それこそ後でもいいじゃねぇか、飛ばすぞ」
「あ!おい待てって」
半ば強制的に倉庫から連れ出された私は、隣で蛇行する男を呆れた眼差しで見つめる。
飛ばすぞ、なんて言葉を吐き出すや否やアクセルを全開にした男は一斉に周りの車からクラクションを浴びていて。
「………阿呆め……」
特大の溜め息を一つ零してから、既に小さくなった男のあとを追うことに。
ヒロヤと二人で出るときは、ほぼ毎回と言っていいほどパトロール中の警察に見つかっていて。
最早運が悪いとしか言えないけれど、それでも。
アイツと一緒に馬鹿なことをする時間は、私に取ってかけがえの無い時間に他ならなかったんだ。
「――――……、」
唇をきゅっと引き結び、馬鹿な男の尻拭いをするべくバイクの速度を引き上げた。